減価償却とは、個人事業主や法人が資産を取得した際に、その購入費用を何年かに分けて分割計上する会計処理の方法です。減価償却は国税局の定める資産の耐用年数に応じて償却期間が設定されており、それぞれの資産に合わせて計算する必要があります。
そこで今回は、減価償却の目的や対象資産、計算方法について前編と後編に分けてご紹介していきましょう。
減価償却は、資産の実態に合わせてその価値を年々反映させ、正確な財務情報を提供することを目的とした会計の方法です。資産の多くは購入時に最も価値が高く、使用することで価値が減少していきます。購入費用を使用可能な期間にわたって分割して費用計上することで、所有している資産価値がどれだけかを把握できます。
減価償却の対象は「有形固定資産」と「無形固定資産」に分類されます。
それぞれ、以下の通りの資産が挙げられます。
有形固定資産
【建物】 事務所・店舗・工場・倉庫など
【建物附属設備】電気設備・給排水設備・ガス設備など
【生物】 牛馬、豚などの家畜・りんごやみかんなどの樹木など
【車両】 貨物自動車や自転車、バイクなど
【工具】 検査工具や取付工具、計測工具など
【器具・備品】 事務机・キャビネット・冷暖房機器・パソコン・複合機など
【機械・装置】 製造業用設備・農業用設備など
無形固定資産
ソフトウエア、特許権、意匠権、商標権など
減価償却の対象になるのは「年月の経過により価値が減少する資産」です。つまり、年月が経過しても価値が減少しない資産は減価償却の対象になりません。例えば、土地は使用によって価値は減少しないため、減価償却の対象にはなりません。
また、歴史的価値や希少価値のある美術品や骨董品などは年月の経過で価値が変わらないため、減価償却の対象外です。ただし、美術品や骨董品の中でも取得価格が1点100万円未満の場合には減価償却資産として扱われます。
減価償却の扱いは、個人事業主と法人の場合で異なります。
個人事業主の場合、資産の減価償却は義務となっており、耐用年数に応じて減価償却処理を行う必要があります。
一方、法人の場合は法人税法で償却限度額に達する金額までは償却費として損金算入されます。したがって、法人の場合は任意で減価償却を行うことができるといえます。
ただし、減価償却を行わずに利益を過大に計上することは会計上適切な処理といえず注意が必要です。
以上のように、減価償却は個人事業主にとっても法人にとっても必要な会計処理です。固定資産の中でも減価償却できる資産と減価償却できない資産があり、所有している資産によっても償却の年数や償却方法が異なります。後編では、減価償却の方法について解説していきます。
永井会計事務所では減価償却などの会計業務に関するサポートもさせていただいております。お気軽にご相談ください。